コオロギを探した夜

生物学科では“秋の虫”の形態を観察する実習があったのですが、観察対象となる虫は学生自ら捕まえる必要がありました。少し肌寒い秋の夜、私は近所の草むらに分け入ってコオロギを探しました。人間が近づくとコオロギは鳴くのをやめてしまうのですが、しばらく気配を消しているとまた鳴き出すので、コオロギを見つけるのはそう難しくはありませんでした。

捕まえたコオロギはアパートに持ち帰り、形態を観察してスケッチしました。コオロギは左右の羽をすり合せて鳴くので、羽の構造を特に詳細に観察しスケッチした記憶があります。生物の機能はその構造と密接な関係があることから、生物学科の実習では対象を観察してスケッチする作業が頻繁にありました。先日20数年ぶりに当時のスケッチを見返したのですが、点描画で描かれたスケッチには文章だけのレポートには無い味があり、今の私にとっては昔作った芸術作品の様に感じられます。

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