水銀整流器
電車の直流変電所などでは1960年頃まで「水銀整流器」なるものが使われていたそうです。タコの様な形で青白く光る、とてもインパクトのある姿をしています[1]。
この整流器は水銀アークの整流作用を利用しており、陰極に水銀を、陽極には黒鉛などを用いています。電流は陰極の水銀溜りが負の電位のときだけ流れます[2]。陽極である黒鉛は電子を放出しにくいので、陽極が負の電位のときは電流は流れません[4]。水銀溜りからの電子放出機構については、熱電子説だけでなく電位勾配説などがありはっきりとは解明されていない様です[3]。
陽極が過度に加熱されてガスを発生(電子放出)すると逆向きに電流が流れて短絡事故が生じるので(逆弧)、陽極は放熱構造なっているそうです[4]。しかしこの逆弧の問題を完全に解決するのは難しく、最終的には半導体整流器で代替されていった様です[5]。
【参考文献】
[1] ~タコと呼ばれた水銀整流器~(ミカド電装商事株式会社)
[2] 水銀整流器とは – コトバンク
[3]「電鉄の整流方式」 鉄道解析ごっこ(2007)
[4]「遷音速風胴設備更新に関する予備調査」航空宇宙技術研究所(1979)
[5]「変電所用整流器」鉄道技術 来し方行く末 第42回(2015)